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#『どろんこ園』~里の幼稚園を目指して~

THE プロジェクト島の自然の中でのびのびと子育てできる保育施設を開園

「どろんこ園は、ここに来たら”どろんこ”になりますから着替えを3つくらい持ってきてね。くらいのイメージで名付けました(笑)」理想の保育をしたいと一念発起して開園した保育施設『どろんこ園』がどのようなところか、園長の黒川さんに伺ってきました。

どろんこ園 園長 黒川 奈緒子さん

保育士としての思いを大切に

黒川さんは大学卒業後、広島市の保育園に勤務。しかし17年前に「もっと子供に寄り添う保育がしたい」という思いから田舎の保育園に興味をもち、佐伯郡能美町(現 江田島市能美町)の保育士の試験を受け直す。見事合格し、単身、島に移住して保育士として活躍していた。

そんな彼女が「20年保育士をしていると、子供を預かっているだけで保育をしていないな~って感じ始めちゃったんですね。」と語るように、理想と現実の間で悩むようになっていた。コンプライアンスという言葉で、保育環境を制限されることが増えてきたのも要因の一つで、田舎で寄り添う教育を目指し、転職して島に来ているので尚更、制限を感じていたようだ。

そんな悩みを、教育について同じような考えをもつ知人に相談すると「今の教育の世界を一人で変えようとしても無理だと思うよ。新しく自分で始めたほうが早いよ。」とアドバイスされたのが、どろんこ園を始める一押しになったようだ。

理想の保育を実現するためにどろんこ園を立ち上げた黒川さん

この江田島で理想の保育を

黒川さんは常々「将来、森の幼稚園のようなことがしたい」と周囲に話していたそうだ。『森のようちえん』とは、自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称で、自然の多く残る江田島市は、もってこいのフィールドと感じていた。

その話を聞いた人から紹介されたのが、現在の『どろんこ園』がある場所。もともと、花農家さんが住まれていた空き家で、畑もあるし、周辺も車が通らない自然あふれた環境。「江田島版の森のようちえん、里のようちえんを目指そうと思って、すぐに購入しました。」場所が決まり、さらに、江田島市と江田島商工会の取り組む創業支援の『創業塾』『がんばりすと応援補助金』で資金を確保。理想の保育環境を作るプロジェクトが動き始めた。

「おなかに子供がいたので、子供を産んでゆっくり準備しようと思っていたけど、なりゆきで産後2か月で開園することにしたんです(笑)」夢を語ることから始まり、とんとん拍子にたどり着いた開園。保育士仲間に「行き当たりばったりなんですよ~」って話すと、「行き当たりばっちりだと思うよ♪」との返答。仲間の言葉を後押しに、開園後も安心して理想の保育を目指し充実した日々を送れている。

元々は花農家さんが住んでいたという空き家物件を購入

『どろんこ園』の目指す保育

「保育園で働いていた時に、お母さんから、子供のポケットに砂が入っているんですけどというクレームがありました。現場では、砂が入らないように注意しますとしか応えられないんです。本当はお子様によく遊んだねと褒めてあげてくださいって言いたいんですけどね。」と当時を振り返る。

そんな黒川さんの理想は『自主性を重んじる主体的保育』。靴を履かせるのは簡単だけど、本人がやりたいと言ったら、時間がかかっても待ってあげる。子供がやりたいことをさせてあげることが、成長に重要と考える。「待つことが一番簡単で、一番大変なことなんです。」と目指す保育を語った。

どろんこ園で自主性を重んじた保育を目指す

『どろんこ園』の環境

『けがと弁当は自分もち』建物に入ると、冗談のような張り紙が目に入る。「保育を学ぶとき、山あり谷ありのデコボコ道や一本橋を体験していたほうが子供の怪我が減るっていうことを学ぶんです。でも、いざ保育現場にくると、あれ?まっ平。どうして?ってなるんです(笑)」親御さんにもこのことを伝えたいためで、実際に広場にはでこぼこの砂山、納屋にボルダリングが作られ、体のバランスをとって遊べるように工夫されている。

その他に、お子様を預ける親御さん同士の相互理解も必要という。「一般の幼稚園や保育園だと、子供をのびのび遊ばせたいけど、周りの子に迷惑をかけられないって思っちゃいますよね。でも、のびのび育てたいという親同士だと、子供たちがそれぞれ迷惑かけても見守っていただけています。」基本的に子供たちがすることに口を出さないことが重要という保育方針は、親御さんに届いているようだ。

掲示板には「けがと弁当はじぶんもち」の標語が貼られている

砂場に竹竿の一本橋と古タイヤが置かれたスペースは絶好の遊び場

納屋に作られたボルダリング場

どろんこ園の今

開園当初は月水金を開園日にしていたが、子供たちのリズムがつくりやすいという話を聞き、火水木を開園日にしている。休園日も、園の整備や畑を耕し、イベント企画や告知業務などで、ほとんど毎日どろんこ園で過ごしている黒川さん。「自分の夢だった理想の保育をしていると毎日が楽しいんです。日々楽しんでいるとついインスタの告知など遅れてしまって…。色々間に合っていないんです。(笑)」

そこに心強い協力者が現れる。島の自然の中で、子どもたちがたっぷり遊びながら、自分で感じ・考え・判断し行動するという保育計画に賛同する、無償で手伝ってくれる保育士の資格をもった仲間たち。

協力者が増えたことで、子ども達だけでなく親御さんの精神的なケアを考え、一時預かりも始めている。「ゆっくりご飯を食べたい。そんな日常のこともできない状況のお母さんもいるんです。」今の世の中、頼れる人が周りにいなくてワンオペ育児で悩む親も少なくないそうだ。他にもストレスのない環境で子育てできるようにと、急な用事があるときは柔軟に受け入れている。レアなケースだとワーケーションで来ていた方のお子様を一時預かりしたこともあるそうだ。

黒川さんご自身も現在子育て真っ最中

みんなとともに

「暮らしの中に学びが詰まっているんですよ。」という黒川さん。日常の保育以外に、『干し柿を作ろう』『味噌を作ろう』などのイベントを開催。里山の暮らしにそったイベントをママも楽しんでいる。「ママが楽しかったら、子供も楽しそうにしていますよ。」健全な親子関係を育む機会になっているようだ。普段は子育てについて相談しあえるオープンスペースになっているので、いつでも遊びに来てほしいと、黒川さんもオープンだ。

お話を伺った後で、畑を手伝いに来ていたボランティアの保育士さんに駆け寄り紹介してくれた。黒川さんと一緒に保育することで、改めて保育士としての生きがいを感じているという。そんなボランティアの方達のためにも「今は給料無いけど、みんなと一緒に継続できるよう、私もいっぱい考えて、うまく回せるように頑張ります!」心強い言葉でしめくくった。

<2023年3月掲載>

WITH これから一緒に

ふらっと来ても楽しめる場所づくりを目指しているので、興味を持ってくれる人は子供から大人まで様々な人に来て欲しいです。