2022年8月に江田島市の北端の切串地区に、複合施設がオープンした。その名もKirikushi Coastal Village(キリクシ コースタル ビレッジ)。どのような施設なのか代表の蛇草さんにお話を伺いました。
Kirikushi Coastal Village(キリクシ コースタル ビレッジ)は切串小学校の真向かいにある。細い路地を入って現れる空き家をリノベーションしたこの施設は、ウッドデッキのある庭を取り囲むように建物が建ち、南側には畑が広がる、入口からは想像できない空間。「この空き家と出会ってからが始まりですね。今まで江田島になかった形で、空き家を利用するモデルを作りたいんですよ」と蛇草さんは語る。
「この空き家に出会ったとき、テナントビルのように活用してみてはと思い付いたんです。」色々な人たちに各部屋を借りてもらい、テナントとして思い思いに使える空間づくりは、そんな閃きから始まった。現在は、ウッドデッキの奥に見えるウッディーな落ち着きのある広い空間はコワーキングスペースで、イベントスペースとしても利用している。建物2階には美容サロン、別棟には自転車屋さん、さらに2組ほど入居することも決まり、5つの事業者が利用する施設になる。
「田舎のカフェやお店ってポツンポツンと離れた所にあるんですよね。一つ一つが違う場所でやるより、テナントビルのようにお店が集まったほうが、お客様も集まって楽しみやすいんじゃないかと考えました。お店の人にとっても良いんです。一人で店番って孤独ですしね(笑)」
事業を始めるにあたり、切串という地域にも惹かれたという。「江田島って、港に近いところがあまり栄えていないのがもったいないと思っていたんですよ」実際、切串地区は江田島市の中では北端になり、お店や人口も少ない地域。一方で、広島港まで30分、呉市のポートピア港へは10分で渡れる、2つの航路があり、島から出るのも島へ入るのも便利。そんな地域の可能性を広げたいと考えているようだ。
「出会った瞬間に理想がイメージできたので、建物はすぐ購入しました。」どのようにイメージに近づけるか?資金調達をどうするか?その他もろもろ問題はあったが、理想を求めまず購入。その後、地域の人たちのおかげで事業は進んだと言います。
「地域の活性化に繋がることだと言って、切串地区の地域活動をされている方々が助けてくれました。解体やゴミ出し、清掃や壁塗りまで協力してくれたことで大きく前進したんです。」リノベーションが動き出したら次の動きへと繋がり、DIYイベントを開催するなど、多くの繋がりができたという。今では近所にたくさんの仲間ができ、お互い行き来し楽しんでいるそうだ。BBQの回数も増えたとか(笑)
『資材などの費用をどうするか?』という問題に対する挑戦はクラウドファンディング。蛇草さんは開口一番「もう2度とやりません」友人や知人が少なかった(※1)こともあり、相当な苦労があったようだが、効果も相当だったそうだ。「目標額達成はもちろん助かったけど、それ以上に認知という面ですごく効果的でした」と言う。広島のテレビ局とか新聞に取り上げられて大口の出資者が現れ、さらにその出資者が施工業者を紹介してくれて問題が次々に解決。地域の人々の協力と併せてどんどん理想の形に近づいている。
空間は蛇草さん自身がデザイン。東京で空間デザインの仕事を15年ほどしていた過去を持ち、木造の空き家のリノベーションを2件経験して、自身のプロジェクトでの挑戦。「住むとなると隅々までキチンとしたいけど、住まないって決めたら、そこまで仕上げなくてもいいじゃんって思えたんです。少し壊れていても『アジ』として見えるんです。」実際、板を剥がして砂壁が見えるところなど、なんとなく良い雰囲気に仕上がっている。
テナントで入っている方々も面白い。店舗は借りた人がそれぞれの好みで、借りた部屋をDIYするのだという。「少しカオスな感じですが、それぞれの好みで装飾してくれています。手が足りないときはお互い手伝いますしね。」翌日も自転車屋さんに解体を手伝ってもらうそうだ。
すっかり切串の多くの人たちと仲間になっていますが、交流は大人だけではありません。『おかげんさん』という切串地区の夏のイベントで小学生と一緒に活動したことで、小学生とも交流を持つようになっている。その流れで校長先生とも仲良くなり、切串で新たなアクティビティが出来ればもっと楽しくなると一緒になってたくらんでいる。
サイクリストの乗降の多い切串港。サイクリングして、BBQして、酒飲んで寝る。そんな妄想から、空いている部屋を宿泊できるように改装を始めるそうだ。「1日1組ですけどとりあえずやってみます。アクティビティが色々できるともっと楽しくなりますよ」隣の空き家も買って規模を大きくしたいと夢は膨らむ。
友人や知人が少なかった(※1)理由は、蛇草さんはコロナ禍の2年前に東京から移住してきたばかり。そんな渦中に移住して来たので、どうしても友人の輪を広げるのに時間がかかったという。
最初は九州への移住を考えて、移住相談センターに行ったが、予約が必要で話が聞けなかった。その時、広島県の担当者が対応して話を聞いたのがはじまり。
状況を説明したところ紹介されたのが島嶼部の江田島市と因島市。片道は補助金で行けることを知り、早速、島嶼部を回ってみたそうだ。「因島市や尾道周辺の島嶼部は移住者の方が活躍されていて入る余白が少なく感じたんです。比べて、江田島はまだまだ活躍できる余白があるなって感じたんです。なんとなくですけど(笑)」と言う。
さらに、江田島市で『空き家活用ディレクター』を募集していたのも何かの縁。東京でテナントなどを手掛ける空間デザイナーとして設計の仕事をしていた蛇草さんにとって、新たな挑戦の場として丁度良かったとふり返る。
『切串 海沿いの村』これが『Kirikushi Coastal Village』の直訳。港のある切串に島外の人が来る、島の人が使う。色々な人が思い思いに使い楽しめる交流の場をイメージして名付けたそうだ。すでに広島市からは『自転車工房MASA』、江田島市内からはエステサロン『AReey』が運営をはじめていて、さらに2つの事業が参加を希望している。定期的にイベントも開催され、様々な交流が始まっている。「この事業は空き家を活用した地域活性で、空き家活用のロールモデルにしたいんです」これからどんな事業者が村人になり、どんな交流の輪が広がるか楽しみだ。
<2023年3月掲載>
移住を考えている人にとって、江田島はまだまだ活躍できる余白があるなって感じます。新たなトライをお考えの方、『Kirikushi Coastal Village』へ足を運んでください。
テナントなどの空間デザインも承っています‼
Kirikushi Coastal Village
https://kirikushi-coastal-village.studio.site/