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教育で誰かの人生を変えていけたら

2021年は、新聞やテレビ、ネットなど様々なメディアに、江田島市へ進出した企業のサテライトオフィスが紹介されました。その中から今回は、合同会社GeneLeafさんを紹介します。
同社は、社員を連れて2021年5月に江田島市へ移住。オフィス兼社員住宅に賃貸空き家を活用されています!
東京から江田島市へ移住しての働き方や、今後の展望について、代表社員の安西さんにお話を伺いました。

会社名
合同会社GeneLeaf(ジーンリーフ)
本社所在地
広島県江田島市江田島町秋月2-5231
資本金
1,000,000円
URL
https://gene-leaf.co.jp/

サテライトオフィス開設を江田島市に決めた理由は何ですか?

私の出身は神奈川県ですが、相模原市の緑区という山が多い地域で、海のそばで暮らしたい憧れがありました。
サテライトオフィス開設にあたり、IT企業の誘致に注力する広島県が、社員の移住やオフィス改装に補助金を出す制度「ずっと広島県」に着目し,広島県内の候補地を幾つか視察しました。「広島県の海が見えるオフィス」で検索し、江田島市では、移住相談サポートセンターのあるフウドに連絡を取りました。
はじめて江田島市に来たとき、後藤さん(現在はフウドの代表理事)に沖美町の海のまわりを案内してもらったんです。その眺めを見て”いいな”と思ったんですね。良さを言語化するのは難しいんですけど、フィーリングだと思います。

GeneLeaf代表社員 安西翔平(あんざい しょうへい)さん
沖美町の風景(美能沿岸)
沖美町の風景(畑漁港付近)

現在のオフィスは、どうやって決めましたか?

江田島市を知ったきっかけのフウドに、最初は、オフィスを構えようと考えていましたが、16時で閉まると聞いて、ここでのオフィス開設はできないな、と(笑)。でも、現地の様子を見学に行ったところ、前述の後藤さんと知り合うことができました。出会いを作れたという点でフウドの存在は大きかったですね。
それ以降は政策推進課(市の未利用財産利活用やサテライトオフィス誘致などの担当課)の川上さんに、いろいろと相談に乗ってもらいました。その一つが、オフィス用の空き家物件の紹介です。
古民家的なものを買うつもりでしたが、縁あって大柿町深江地区にある賃貸の平屋に決まりました。第一印象は、広い、門がでかいと思いましたね(笑)。

沖美町にある江田島市移住交流拠点施設「フウド」(写真はフウドホームページより)
現在暮らしている大柿町のオフィス(サテライトオフィス兼社員住宅)

移住後の仕事や生活はどうですか?

江田島市内は光回線が整備されているので、弊社のようなIT企業でも仕事ができます。業務にも特に支障は出ていないです。
今のオフィスは(海のある景観で最初に魅せられた)沖美町ではありませんが、ここからでも徒歩1分程で、海からの眺めや綺麗な夕陽が見られます。生活面では、早起きになりました(笑)。
東京ですと以前は飲み会など付き合いもありましたが、江田島市では機会も少ないですし。
移住後、オフィスのWi-Fi開通まで、Wi-Fi完備のカフェなどで仕事をしてましたが、フウドも、喫茶のら(能美町中町「体験民宿NORA」が併設している喫茶店)も営業時間は16時まで。市内で夜遅くてもWi-Fiが使えるのはファミレスやコンビニに限られるので、当時はファミレスもよく利用しました。
緊急のミーティングが入ったら、喫茶のらさんにお願いして、営業時間の後に特別に場所を使わせてもらうこともありました。
あと江田島市内は、火曜日に店が閉まりすぎている印象を受けました。
他には、若い人がいない、なかなか出会えないというのがありますね。

オフィス付近の夕陽(※安西さん撮影)
オフィス付近の漁港の眺め

東京と江田島市の環境の違いで感じたことはありますか?

江田島市内は道が狭い場所が多く、車ですれ違う時、面倒に思うこともありますが、気になる程ではないです。
生活面の差異はそれほど無かったです。市内に商業施設もあり、ネット通販も利用できる。買い物の不便は感じないですね。
コンビニも、オフィスから車で3分程度。東京と江田島市でのコンビニの距離感は変わらないです。東京でも部屋を出てエレベーターに乗っていると、3分位はすぐ過ぎます。
唯一のデメリットをあげるなら、都内のように書店を巡り、立ち読みして本を購入できなくなったことですね。
あと、環境面では、虫が多いと聞いていましたが、やはり多いですね。
冬場の外気温は大差ないと感じますが、オフィスの木造住宅は窓が多く、外気に接する表面積も広いため、屋内はかなり寒いです。東京ではトイレに行くのが億劫とか絶対ありえないんですが(笑)。

江田島市での今後の目標は何ですか?

事業というのは、世の中に差分を生み出すためにやってると思うんですけど、私はそれを教育を通して実現したいと考えています。
地元で人を採用して、ソフトウェア開発ができるように技術を磨いてもらうのもそうですし、プログラミングを学びたい人のサポートもしたいと思っています。
ただ教育が贅沢品になってはいけないので、無料で誰でも学べるような環境を作って提供したいです。

弊社の共同創業者とは、3年前、私がプログラミングを勉強した学校で出会いました。
その学校では、東京と地域との格差を無くそうと、地方の学生や東京在住者以外の人に、東京への交通費や食費、シェアハウス代などを全部企業が負担し、無料でプログラミングを学ばせていました。
プログラミングのスキルを得て、企業への紹介採用で対価を生み出すビジネスモデルのスクールで、私と共同創業者の彼とで勉強していました。
当時の私は全く、お金もスキルも無かったんです。
スクール修了後、彼と一緒にサイト開発の仕事を受け、望外に収入がありました。これで急激に自信がつき、生きていけると思ったんです。
私は、プログラミングを無料で学んだ契機から「いま自分がここにいる」と思っていて。その輪を広げていきたい。
過去の私は、スキルや人脈、お金も全然なかった――。そんな自分みたいな人の背中を押すのが夢なんです。
それを今後江田島市でも、やっていきたいと思ってます。まだ詳細を発表するまでお時間いただきそうですが、近いうちに。
江田島市に若い人が増え、既に市内へ進出してるIT関連の会社の採用にも繋がればいいかなと思っています。

話は少しさかのぼりますが、私は、4~5年前、日本にやってきた難民の若者たちと一緒に、誰もが活躍できる未来をつくっていこうということも、日本のNPO法人(NPO法人WELgee(ウェルジー)。安西さんは現在、法人の理事に就任)で行っていました。
母国での紛争や迫害などから逃れてきたアフリカ・中東・アジア出身の人材を対象に、プログラミング学習の支援などを行い、「育成・採用・定着」という軸で伴走を実施することで、人材の強みを引き出しています。
当時は全然スキルがなかったんですけど、教育を受けて活躍している方々の姿をみて、自分も学んでみようと思ったのが、プログラミングスクールで学び始めたきっかけでした。
そのNPOが初のキャリアだったのですが、これらの経験が原点となり「教育で誰かの人生を変えていけたらいいな」という想いがずっとあります。
そして、輩出した人が世の中で活躍することで、何か差分を生み出せるのではないかと期待しています。

江田島市のサテライトオフィス開設も、差分を生み出したい強い意識からでした。
広島市内で就職したいエンジニアの方は、職場探しにそこまで困らないと思います。
ですが、江田島市で就業希望のエンジニアがいても即、採用や就職は難しい。今は状況が変わっているかもしれませんが、IT企業の進出がなかった昨年以前は厳しかったと思います。
私たちなら、そういう選択肢も提供できますし、江田島市に来たほうが世の中に与えるインパクトが大きい。実際に、働く場所を探していた、江田島市秋月地区出身の新卒の学生が4月に入社予定です。
それと江田島市は、他の島しょ部より、流れが来てる気がするんですよね。今年以降たぶん……まだ言えないことも多いんですけど、いろいろ面白くなると思うんです。
おこがましいかもしれませんが、こちらに来てから、江田島市が変わりゆく姿を見られるといいますか。
本来の良さは失われないでしょうけど、いい意味で、変わっていくところが見られるんじゃないかなと思います。

オフィスでの業務風景。エレキギターや文庫本、エヴァ13号機など、そのひとつひとつがクリエイティブの源泉となるアイテムが職場を飾る。
オフィス応接室に置かれた、安西さんの趣味のボードゲームの数々。プレイヤーは官公庁の方や、ボードゲームを使って教育を行っている企業の方なども。ゲーム自体の面白さに加えて、コミュニケーションツールとしての役割も果たしている。

江田島市に移住を検討している方へアドバイスはありますか?

移住って大きな決断だと思うんです。
引越先の人間関係や、希望する仕事が見つかるかどうか、不安もあるでしょう。
江田島市というのは、来たあとに、自分が求めていた環境に近づけやすいと思うんですね。
移住後に都会が恋しくなっても、フェリーですぐ広島市に出られます。
自分が望む仕事が江田島市内になくても、近隣の市へ範囲を広げれば、大体の職種は探せるでしょう。後悔しづらい移住ができるんじゃないかと思いました。
江田島市は、海も山も身近にあり自然が豊かなところです。来てから、その選択は正解にしやすいと言いますか。来たらわかると思います(笑)。

人間関係もある程度選べます。友達も、作ろうと思えば作れます。年齢にもよると思うんですけど。
私の場合だと、相手との年は離れてるんですが、いろんな、いい方がたくさんいらっしゃいます。
私自身も、移住の際はいろんな方に相談に乗ってもらいました。
移住で悩んでいる会社の社長やエンジニアの方がいたら、いろいろと市内をご案内したいですね。
「一度、江田島市を見てみようかな」と考えてくれたらと思います。

<2022年2月掲載>